裁判所書記官の日常その10「口頭弁論は一瞬」

1回の民事裁判の期日(=口頭弁論期日)は,証人尋問を行う期日などを除けば,通常は5~10分ほどで終わってしまうことも少なくありません。
一度でも法廷傍聴をしたことがある人ならば,法廷内で何が行われているかわからないうちに,1件,2件と事件が終了していくのを見たことがあると思います。

現在の民事裁判は「口頭弁論」という名称でありながら,実際には書面手続が中心です。すなわち,主張したいことは,裁判の場で話すのではなく書面にして提出しなさいということです。

司法書士等の訴訟代理人は,当然そのような実務の取り扱いを知っていますが,一生に一度裁判をするかどうかの一般人はそんなこと知りません。裁判官に対し自分の主張を漏らすことなく伝えるため,「そもそも本件の発端は・・・」と自己の主張を滔々と話し始めます。
すると,間もなく裁判官から制止され,まず間違いなく「では,今話した内容を次回期日までに書面にまとめて提出してください。」と指示されることになるでしょう。
さらに,発言内容によっては,「それはすでに提出した書面に書いてありますよね。」とか「それは本件の争点とは直接関係ないですね。」などと一蹴されてしまうこともあります。こうなると,もう一般人の方ではそれ以上話せなくなってしまうこともありえます。

裁判所としては,限られた時間の中で,本件請求に必要十分な主張を聴取しています。それが結果としてわずか5分の裁判であってもです。
しかしながら,緊張して臨んだ裁判が5分程度で終わり,(本人の感覚として)話もまともに聞いてもらえなかったなどとなると,法律的には手続に何ら問題がなかったとしても,「裁判所は全然自分の話を聞いてくれなかった。」という気持ちに繋がっていくこともあるのだろうと思います。

訴訟当事者を本人尋問する意義の一つに「ガス抜き」などと言われることがありますが,どこまで当事者の話を聞くかは難しい問題です。

(つづく)

 

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