裁判所書記官の日常14「怒れる債権者」

破産係の電話や窓口には,しばしば債権者からの問い合わせがあります。その中には,債務者が破産した旨の通知が届き,それに対する怒りや驚きの声が一定程度あります。

多くの場合,怒れる債権者の第一声は「いきなり破産なんかしやがって!!」という感じのものです。勿論,債務者が事前に破産する旨の連絡をしたところで許すつもりはないでしょうが・・・。

怒りにまかせた恨みつらみの文言が一通り終わると,大抵その次は,自分の債権がどのくらい回収できるかを尋ねてきます。
その際,「全額は無理だとしても,せめて半分でも返してほしい。」と言ってくる人が結構います。

借金を無条件で半分にしてやるというのですから,債権者としては大幅な譲歩であることは間違いありません。が,メディアを賑わす大型の倒産案件を見てもわかるように,破産手続の中で,債権を半分も回収できるなんてことは通常ありえません。数パーセントからほぼゼロというのがほとんどではないでしょうか。

金融機関等の大口の債権者は,そのようなことは当然承知しているので,債務者が破産したことについて,内部の事務処理に必要な事項のほかは,裁判所にとやかく聞いてくることはまずありません。破産後の事務処理を淡々とこなすだけですので,債権者集会に出席する担当者も,裁判所(破産管財人)が配る資料をもらうだけで発言することもまずありません。

一方で,個人の債権者は,怒りが収まらず,破産者に文句のひと言も言ってやらないと気が済まず,平日に行われる債権者集会にわざわざ出席される方も少なくありません。しかしながら,それにより得られるものは特にないのが実情です。

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