裁判所書記官の日常17「撤回」

昨今,毎日のように,政治家が「撤回します」と発言している報道を目にします。
政治家の場合,「撤回」すれば,当該発言は遡及的に取り消され,責任も一切なくなるというニュアンスで使用しているように聞こえてきます。
そう考えると,「撤回」という語はいつの間にか随分と便利な言葉になってしまいました。ただし,日常生活で一般人が同じニュアンスで使用したら絶対に怒られそうですけどね(笑)

「撤回」つながりですが,訴訟手続の中で「撤回」と言えば,「証拠の申し出の撤回」というものがあります。
書証でも人証でも,当事者がこれを(この人を)調べてくれと申し出をして,裁判所がその証拠を調べます(=「証拠調べをする」と言います。)。
証拠の申し出は,証拠調べが行われるまではいつでも自由に撤回できます。「やっぱりこの証拠は自分に有利になりそうもないので撤回する」というのはありということです。

ただし,証拠調べが終わった後は,すでに裁判所(裁判官)の心証に影響を与えてしまっているので,そもそも撤回の余地はありません。自分に有利な証言をしてくれると思い連れてきた証人が,豹変して爆弾発言をしてしまったからといって,やっぱりこの証人は撤回しますというわけにはいかないのです。

ま,実際の裁判では,自分が連れてくる証人は,さんざん尋問の予行練習をしたうえで連れてくるので,大きく練習と異なる発言をしてしまうことは少ないですが,相手方からの尋問(反対尋問)や裁判官からの尋問でボロが出てしまうことは,ままありますよね。

政治家の方も,一度した発言は,いくら撤回しようとも国民の心証に影響を与えてしまっていることを肝に銘じて発言してほしいところです。

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