裁判所書記官の日常54「一つの事実の食い違い」

アニメで「真実はいつもひとつ」という名セリフがあります。

確かに現実に起こった事実(現象)は一つなのでしょうが,当該事実の評価については,人それぞれの捉え方や感覚の差があります。

実際の裁判手続の中では,特に離婚訴訟やDVなど感情的な対立が激しい件では,
「頭を殴られた。」「頭を軽く小突いただけ。」
「怒鳴られて怖い思いをした。」「普通に注意をしただけ。」
「いきなりキレられた。」「以前からいくら注意しても態度を改めないので強く言った。」

など,勿論,自分に有利になるように故意に軽く(重く)主張することもままあると思いますが,事実は事実でも,その程度やそこに至る経緯(原因)が全く違うことは少なくありません。
すでに感情のもつれがある状況だと,相手から何をされても悪い方へ解釈してしまうことはありますよね。

余談ですが,「事実は一つ」という話の繋がりで思い出したのですが,ずいぶん前にこんな裁判がありました。
市立中学校の部活動中に事故があり,生徒及び保護者が市を訴えました。
そして,監督責任に係る主張の中で,事故当日に当該部の顧問(教師)が指導に見えていたかが一つ争われました。
ところが,顧問本人は指導に来ていたと主張し,原告の生徒及び他の部員全員が,顧問はいなかったと主張しました。

明白な証拠がないために,口裏合わせ等により,こんな単純な事実の存否さえ主張が一致しないのかと驚いたことを今でも覚えています。

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