裁判所書記官の日常57「証拠保全」

証拠保全という手続があります。

よく使われる事例としては,医療(過誤)訴訟を提起する準備として,医療機関にあるカルテ等を証拠として押さえるケースです。

医療訴訟を含む損害賠償請求訴訟は,損害を被ったとする原告側が主張・証拠を揃えて裁判をするのが原則ですが,こと医療訴訟については,その証拠となるカルテ等の文書(データ)が,ほぼ全て相手方の病院側に存在します。
そこで,そういった証拠書類の紛失・毀損・改ざん等を防ぐため,一定の要件のもと,訴訟提起前に証拠保全手続により証拠を押さえることが認められているのです。

証拠保全は,書記官事務からみると,関係部署と事前にやりとりが色々と必要なため,面倒でやりたくないという人もいるようですが,たとえ近場であっても数少ない出張仕事だったので,私は嫌いではなかったです。

裁判所職員(及び申立人関係者)が証拠保全に行く日時を先に病院に伝えると,結局改ざん等の機会を与えることになってしまいます。
ただ,病院側も準備が必要でしょうから,実務的には,到着(手続開始)時間の1時間ほど前に,先乗りした執行官が決定(証拠保全を行う決定)を病院に渡して伝えます。

それでも「不意打ち」に近いことは否めません。
そのため,何回か証拠保全を経験している大病院ならともかく,個人経営の病院や家族経営の会社などでは,裁判所の職員が到着したときも,これから何が起きるのかと担当者が動揺されていることもありました。

証拠保全を受けることは,その後に必ず訴訟提起されるということではなく,自分の方に問題(過誤)がないことを申立人に理解してもらい,訴訟提起を避けるという意味もあります。
この辺りの説明は,実際には現場に臨場した裁判官が行うのですが,書記官としても,裁判所の決定とはいえ,あくまで手続に協力してもらうのだという態度でのぞまないといけないところです。

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