「いきなり執行官が来て、〇月〇日までに建物を明け渡ししなければ強制執行されることになってしまった。なんとかならないか。」
こんな趣旨の質問を受けることがあります。
裁判所勤務中、訴訟係や競売係を担当しているときにも、そのような問い合わせを受けることがありました。
「いきなり」の語の真意ですが、確かに、執行官はその職務の性質上、突然やってくるのが通常です。
が、少なくとも建物明け渡しの強制執行は、何の前触れもなく行われるものではありません。
建物明渡し訴訟を経て強制執行が行われるか、金銭給付訴訟から強制競売・引渡命令を経て行われるか、道筋はいくつかありますが、いずれにせよ、その前に裁判所から何度か通知や決定が届いているはずです。
その通知等すら無視していた場合は論外ですので、そういう意味では「いきなり」という言葉に違和感を感じることが少なからずありました。
いざ執行官が来て、「ようやく状況の切迫度を感じて慌てて」という心情もわからなくはないのですが、仮に、明け渡しを拒否する反論や正当な理由があるのであれば、もう少し早く何かしらの対応をしていれば、その後の流れも変わっていたかもしれません。
「明け渡しを認める判決はやむなし、強制執行もしょうがない。ただ、しばらく引き延ばしの手段はないか。」では、さすがに相談に乗ることは難しいですよね。